この記事の内容は、PUSH Dental LearningのGabriel Dolci医師と共同で作成されたものです。
抜歯とクリアアライナーに関する情報については、以下をご参照ください:
概要
クリアアライナー治療が導入された当初は、抜歯症例、特に歯根の大幅な動きや大きな歯の大幅な移動が必要となる症例への適応に制限がありました。
しかし、アライナーのプラスチック材の品質(ClearQuartz™3層構造素材)やデジタル治療プランニングツール(ClearPilot™)の進歩により、治療の可能性が広がり、困難な抜歯症例にも対応できるようになりました。¹
クリアアライナー治療で抜歯が必要な患者を治療する際に課題となるのが、抜歯によって生じたスペースを閉鎖するために必要な歯の動きの種類(傾斜、平行移動、トルクなど)を把握することです。
この課題への回答を得ることで、症例の複雑さ、最適な治療期間、治療における修正の必要性を理解し、可能な限り良好な臨床結果を達成するという最終目標の実現を目指すことができます。
適用
現代の歯科矯正学では、抜歯を通常の治療方法と捉える傾向があり、いくつかの臨床症状に対して、歯牙顔面の審美性と機能を改善するための戦略として抜歯が選択されることがあります。
抜歯は、歯科矯正で数十年にわたり治療方法として使用されており、歯科矯正医が、不正咬合や以下の症状に対する患者の特定のニーズに直接対応することを可能にします。
- 叢生(歯並びが悪い)
- 突出した横顔(切歯が前傾し、上下唇の間に隙間ができることがある)
- 過度のオーバージェット(上顎や上顎歯の前突に伴うオーバージェットなど)
- 前歯部クロスバイト
抜歯を決定する際の一般的な条件として、以下の2つが挙げられます。
重度の叢生
叢生とは、アーチ内に歯を適切に整列させるためのスペースが不足していることに起因する不正咬合のことです(図1)。歯科矯正で最も多く見られる症状の1つです。診断後、臨床医は、叢生の度合いを検査して分類し、その所見に基づいて、抜歯が患者にとって妥当な治療戦略であるかどうかを判断する必要があります。
図1:重度の叢生の口腔内写真。叢生は、適切な歯並びを実現するために、1~3 mm、4~6 mm、6 mm超のスペースを確保する必要がある場合に、それぞれ軽度、中等度、重度に分類されます。
骨格の不一致
Se o paciente tiver uma discrepância esquelética, como uma de Classe Il com protuberância maxilar/mandibular, ou protuberância bimaxilar (Figura 2), o ortodontista pode optar po上顎前突/下顎前突または上下顎前突を伴うクラスIIのような骨格の不一致がある場合(図2)、歯科矯正医は、骨格の不一致を受け入れ、抜歯によって生じたスペースに隣接歯を移動させることで問題を「カモフラージュ」しようとする場合があります(後述の「小臼歯の抜歯」セクションの図5)。
AB C
図2 A、B、C:上顎と下顎の前突を伴う臨床例、骨格と歯並び。診断は、臨床検査と側方頭部X線規格写真評価に基づくものです(A、B)。Cでは、ClearCorrect治療および前歯部後退後の結果が観察されます。
臨床的な考慮事項
歯科矯正で最も多く抜歯されるのは小臼歯と下顎切歯であり、この抜歯方法を選択する際に臨床医が考慮すべき特定の適応症があります。
下顎切歯の抜歯
通常、歯科矯正診断の結果、以下のような臨床的特徴がある、非常に特殊な症例で実施されます(図3)。
- 下顎アーチの前歯部(犬歯から犬歯まで)のスペースが著しく不足している
- クラスI臼歯および犬歯が両側にある
- ディープバイトは見られず、オーバージェットが大きい
- 下顎アーチの前歯部の過剰を伴うボルトン不一致
A B
C D
図3:下顎過剰切歯抜歯の臨床症例。抜歯前の臨床咬合画像(A)とセットアップ画像(B)。右側のグレーの切歯は、抜歯とポンティックの存在を示しています。図3C、図3Dは、治療が終了し、抜歯スペースを閉鎖した後の臨床画像とセットアップ画像です。
下顎切歯を抜歯することが決定されたら、臨床医は、以下に基づき抜歯する歯を選択することができます。
- 4本の切歯の臨床状態(う歯、歯根尖周囲/歯周の変化、破折など)
- 歯の位置(一番位置が悪い歯を抜歯するのが一般的です)
- 歯の解剖学的構造(一般的には解剖学的影響を受けた歯)
下顎切歯抜歯により生じたスペースを閉鎖するための治療戦略と方策
下顎切歯の抜歯後に生じたスペースを閉鎖するために使用される一般的な戦略や方策には、以下のようなものがあります。
- 抜歯する歯の隣接歯2本に、長方形の縦型エンゲージャー(深さ1.25 mm)を使用します。
- 抜歯した歯にバーチャルポンティックが適用されたClearPilot™治療セットアップを使用することで、スペースを閉鎖しながら、その部分の審美性を再確立する方法を視覚化することができます。
小臼歯の抜歯
ClearCorrect®アライナーは、トリムラインが歯肉頂より上にあることから(図4)、歯冠部での保持力⁶と矯正力⁷が向上するため、小臼歯抜歯症例の治療に適しています。
図4:歯肉頂上1.5 mmのトリムライン
抜歯する小臼歯を決定する際、臨床医は、常に歯の臨床的状態およびX線画像で確認される状態を考慮し、修復物やう歯、歯周/歯根尖周囲の変化がある歯を優先的に抜歯する必要があります。
また、歯の位置も重要な考慮事項となります。小臼歯は、通常、その位置が問題の部位(前歯部叢生)に近い場合、抜歯される歯として選ばれます。しかし、場合によっては、第1小臼歯ではなく、第2小臼歯が抜歯されることがあります。下顎アーチに重度の叢生や過度の切歯の頬側傾斜が見られない場合に、上顎アーチのみで抜歯を行うという判断も考慮すべき可能性の1つです。治療の複雑さを軽減し、優れた結果を達成できる方法を検討する必要があります。
A B
C D
図5:上顎第1小臼歯の抜歯を行った臨床症例のスペース閉鎖前(A、B)とスペース閉鎖後(C、D)。
小臼歯抜歯により生じたスペースを閉鎖するための治療戦略と方策
このような難易度の高い症例では、技工者と(処方箋フォームで)詳細なコミュニケーションをとることによって、症例に応じた望ましい治療セットアップを入手することができます。
この点を考慮して、小臼歯抜歯後に生じたスペースを閉鎖するために使用される一般的な戦略や方策には、以下のようなものがあります。
- ドクターポータルの[Treatment Preferences(治療プリファレンス]セクションで歯の移動量を0.2 mmおよび2°に減らします。(これは、このプリファレンスをすべての症例に適用する場合のオプションです。該当しない場合は、処方箋フォームの[Additional Information(追加情報)]セクションからご依頼ください。)
- 抜歯した歯の隣接歯にエンゲージャー(深さ1.25)の取り付けを依頼します。
- 切歯の頬側トルクと圧下を行い、後退/スペース閉鎖時の挺出と舌側傾斜の傾向を最小限に抑えます。
抜歯に使用される補助装置
抜歯時には、治療の補助として補助装置を使用することができます。2 以下で、その一部について検討します。
パワーアーム
パワーアームは歯冠に接着されるため、力の作用線は、平行移動によって遠心移動される歯や歯群の抵抗中心付近となります(歯冠の傾斜なし)。パワーチェーンやクローズドNiTiスプリングを用いて力を加えることができます(後述の「ClearCorrectを使用した抜歯」セクションの図6、図9)。
歯科矯正用パワーアームの本体には、歯に装着するための接着面があります。ブレード状のアームは、本体から歯肉方向に延び、その幅は、近心~遠心方向に延びています。また、パワーアームには、牽引装置(エラスティック)を取り付けるための穴がアームの近心端または遠心端に多数設けられています。 |
図6:犬歯の頬側表面に接着されたパワーアーム、および抜歯スペースを閉鎖することを目的としてパワーチェーンやTADによってシステムを作動させる方法が示されています。
臨床的な観点から、治療でパワーアームを使用する場合は、処方箋フォームの[Additional information(追加情報)]セクションで犬歯と小臼歯の領域にカットアウトを配置するよう指定するか、ClearPilot™のカットアウト3D編集ツールでカットアウトを追加することができます。
カットアウトとエラスティック
カットアウトはアライナーに入れる切込みで、臨床医はこれを使って以下のような補助器具を適用することができます。
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図7:クラスIIの顎間エラスティック用カットアウト |
抜歯後のスペース閉鎖を補助するために、カットアウトや顎間エラスティックを使用することもオプションとして適しています。
TAD
歯科矯正用アンカースクリュー(TAD)とは、受動的ユニットの歯を支えることによって、あるいは受動的ユニットの必要性を完全に排除することによって、歯科矯正のアンカレッジを強化する目的で骨に一時的に固定される装置です。TADは使用後に取り外されます(図8)。
A B
図8:TADを挿入し、パワーアームと合わせてハイブリッド型構造の適用を可能にします。この症例では、前歯部後退の能動的要素としてクローズコイルスプリング(Niti)が使用されています。
また、歯科矯正用アンカースクリュー(TAD)は、主に片方のアーチ内での動きを補助する必要がある症例における補助装置として有効です。反対側のアーチのアライナーのボタンやスリットではなく、TADにエラスティックを固定することで、反対側のアーチ内での不要な動きを防止することができます。
抜歯とClearCorrect®
抜歯治療でClearCorrect®アライナーを使用することのメリットは、臨床医がClearPilot™を使用して望ましい歯の動きをプラニングできることです。臨床医は、臼歯の前方移動、叢生の矯正、前歯部の後退を行うために抜歯スペースをどの程度使用するかをデザインし、治療目標に応じて臼歯の近遠心的傾斜角度と切歯のトルクを設定することができます。デジタル治療計画と臨床結果にはずれが生じる場合があることに注意してください。実際のアンカレッジやトルクコントロールは、必ずしもプラニング通りにはいかない場合があります。
患者の治療で抜歯をプラニングしている場合は、ドクターポータルで注文を作成する際に、処方箋フォーム(ステップ4の[Additional Instructions(追加の指示)]に抜歯が予定されている歯を入力することができます(図9)。
処方箋フォームの[Additional Information(追加情報)]セクションでその他の治療の詳細(図9)や抜歯に関する情報を入力することを強く推奨します。(例:特定の歯に対して、または治療の特定のステップでのエンゲージャー装着を依頼する場合、2 x 2の連続した遠心移動を依頼する場合、サイズ調整可能なポンティックやバーを依頼する場合など)。
図9:抜歯治療では、図に示されるように「全顎矯正」が必要になる場合があります。また、ステップ4の[Additional Information(追加情報)]セクションで、抜歯する歯を選択したり、治療に関する具体的な情報を追加したりすることができます。
クリアアライナー使用時の抜歯に関する役立つ情報
- アライナーを使用して抜歯症例を治療する場合、治療期間中の再スキャンの実施や症例修正は通常の治療特性としてお考えください。このような可能性に備えるために、最初から患者に伝えておきましょう。
- 治療目標を達成し、望ましい臨床結果を得るために、補助的なアンカレッジ装置、パワーアーム、さまざまなエンゲージャーのデザインやサイズ、顎間エラスティック、オーバーコレクションの使用について考慮する必要があります。
- クリアアライナーで最も予測しやすい歯の動きの1つは傾斜³,⁴, で、最も予測しにくい動きの1つはトルクです。そのため、臨床医は、抜歯スペースを閉鎖する際に必要となる動きを特定することが重要です。
- 抜歯症例では、通常、難易度が高い臼歯部の動き(トルク、傾斜、回転など)が求められます。この理由から、必要な歯の動きを可能にし、より予測可能な臨床結果を得るために、2週間の装着スケジュールが理想とされています。⁵
- 治療セットアップでポンティックやバーの追加を依頼することで、スペースの維持や開閉時の審美性をサポートすることができます。
出典&参考文献
症例および画像はPUSH Dental Learningにより提供されたものです。
1. Ojima, K. Dan C., Nisiyama R., Ohtsuka S., Schupp W. Accelerated Extraction Treatment with Invisalign J Clin Orthod 2014 Aug;48(8):487-99.
2. Giancotti, A. and Di Girolamo, R.: Treatment of severe maxillary crowding using lnvisalign and fixed appliances, J. Clin. Orthod. 43:583-589, 2009
3. Papadimitriou A, Mousoulea 5, Gkantidis N, Kloukos D. Clinical effectiveness of invisalign®orthodontic treatment: A systematic review. Prog Orthod. 2078;79:37.
4. Simon et al.: Treatment outcome and efficacy of an aligner technique – regarding incisor torque, premolar derotation and molar distalization. BMC Oral Health 2014 14:68
5. Mays AI-Nadawia; Neal D. Kravitzb; lsmaeel Hansac; Laith Makkid; Donald J. Ferguson; Nikhilesh R. Vaid Effect of clear aligner wear protocol on the efficacy of tooth movement: A randomized clinical trial
6. The effect of gingival-margin design on the retention of thermoformed aligners” by Daniel P. Cowley, James Mah, and Brendan O’Toole
no Journal of Clinical Orthodontics: JCO 11/2012; 46(11):697-702.
7. Elshazly, T. et al. Effect of Trimming Line Design and Edge Extension of Orthodontic Aligners on Force Transmission: An in vitro Study.
Journal of Dentistry (2022). doi: https://doi.org/10.1016/j.jdent.2022.104276
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